Pコートの歴史
-寒さから人を守るために作られたコート、その機能美の裏側-
もくじ
"P"の由来
Pコートとは、2列ボタンで両前の、漁師が着ている紺のコートに使われてきました。
Pコートという言葉は、およそ300年前から使われています。
”P”の由来には諸説ありますが、
粗い毛織物を表す”pije”(オランダ語)からきた
錨の爪”pea”からきた
という上の2つの説が有力です。
しかし、他にも「Pacific(パシフィック)」や「Pilot Coat(パイロットコート)」、海軍の下士官を意味する「Petty Officer(ペティオフィサー)」などが、Pの由来であるという説もあります。
Pコートの本来の色とは
Pコートの色、それは濃紺です。
海軍が冬に着用する上着ということで、海軍の制服に採用されている濃紺色が正式なPコートの色となっています。
なぜ濃紺が海軍で採用されているのか?という理由は、
濃紺が、海の色に対する保護色であるからという説があります。
海の男達のためのデザイン
Pコートは、海の上の男達を寒さから守る為につくられました。
その主なデザインの特徴は2つあります。
一つは、左右どちらでも上前を変えることができるデザインです。
Pコートの特徴として、ボタンのかけ方を左右で変えられるということがあります。
これは元々、艦橋や甲板などの厳しい気象条件で、
風向きに合わせて、ボタンの掛け方を変えて風が入ってくるのを防ぐため為に採用されたデザインです。
もう一つは、Pコートの前面にある手を温めるための縦のポケットが左右についているデザインです。
これは「マフポケット」と呼ばれ、両サイドから手を入れて手を温めるために付けられたものです。
厳しい条件の下で形を変化させたり、手を温めやすかったりと、寒さにすぐ対応できるようになっています。
メルトンウール、Pコートに必須の素材
ウールもかかせないポイントでしょう。
Pコートに使われている生地は、メルトンウールといって
毛織物を織り上げ、生地を仕上げる際に縮絨して表面を毛でおおい、織が分からないようにフェルト状に仕上げたものです。
このメルトンウールは、重く水を通さず、丈夫なウールなので、
寒さや風、少々の雨くらいなら防いでくれます。
寒さから人を守る為に作られたPコートには必須のものですね。
ボタンの錨が語る歴史
ボタンにも特別な歴史があります。
公式に作られたPコートのボタンは、全て大きく薄いプラスチックのボタンです。
その前面にあしらわれたファウルアンカー(からみ錨)は、400年前から続くもので、元々ハワード・エフィンガム卿の印でした。
ハワード・エフィンガム卿は、1588年のアルマダの海戦でスペインの無敵艦隊をイングランドが打ち破った時の海軍司令長官です。
勝利の後、”アンカー”のデザインはイングランドの海軍司令長官の公式な印となり、海軍の印として世界へ広まっていきます。
この”錨”は、本物のPコートのみが持っているものなのです。
寒さから守るためのコートとしてデザインされたコートが「Pコート」です。
由緒ある伝統的な服であるだけではなく、実用的な機能ときれいなデザインとが両立しています。
シンプルで伝統的な型をしているので、カジュアルからドレッシーな場面まで使えますし、
さらには、海の厳しい環境など、どんな気候でも我々を寒さから守ってくれます。
加えて大切なのは、Pコートは、我々をかっこ良く見せてくれるということです。
幅広い肩や細くなったウエスト、2列ボタンは、男性をより大きく強く高く見えるようにしてくれます。
寒さを防ぎながら、ルックスもあげてくれる。
冬には必須のアイテムです!