2014年度の第1四半期は「増収」も様々な懸念が残る英国バーバリー社
2016年で40年以上に渡る、日本のアパレル会社・三陽商会とのライセンス生産契約を打ち切り、価格設定を本来の高いラインだけに戻し、本格的にグローバルなラグジュアリーブランドとして始動した英国のバーバリー社。
実店舗とオンラインショップ、デジタルイノベーションの充実も増収に導いた…と新CEOクリストファー・ベイリー氏
2001年からブランドのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務め、今年の5月に同社の新CEOにも就任したクリストファー・ベイリー氏の長年に渡る手腕が発揮されてか、バーバリー社はアジアと米州全域の業績は好調で、2014年度の第1四半期(4〜6月期)は「増収だった」と発表しました。「世界で最も影響力のあるデザイナー」のひとりでもあるクリストファー・ベイリー氏は、もともとウエアのデザインだけではなくビジュアルや店舗開発、デジタルによる宣伝効果などすべての面に渡って同社に貢献してきた人物です。この売り上げ増加の状況を受け、同氏は「実店舗とオンラインショップ、デジタルイノベーションなどが、過去10年間に渡ってこのブランドを成功に導いた。この先10年間もさらに必要になるだろう」と語っています。
ポンド高が収益に大きな影響を及ぼしている様子
第1四半期に3億7000万ポンド(6億2960ドル)の売上高、既存店ベースの伸び率12%を記録したバーバリー社。ラグジュアリーブランドの売り上げが大きい中国で、ブランド物汚職の取り締まりやぜいたく禁止令などが起り他のブランドが売り上げに苦しむ中、順調に伸びを維持することができたことが大きく関係しているようです。そして本国の英国でも、バーバリーブランドに対する需要を衰えさせることなく維持してきたことの影響も大きいようです。ただし欧州大陸のほうではロシアなどの観光客からの購買力が衰えてしまったことで、需要のほうは伸び悩んだ様子です。また新CEOの積極的なグローバルマーケティングが功を奏し、順調に成長しているように見えるバーバリ社ですが、ボンド高が収益に陰りを与えているようです。
同社の固定費はボンド建てであることに対し、収入は各国の通貨建てであるために、為替レートが現在の水準から変化しないようであれば、今年2014年の小売りや卸による利益は5500万ポンド(9359万ドル)ほど減少するであろうと予想されています。そして調整済みの営業利益率は現在の17.5%から1.5%ほど減少し16%前後になるのではと懸念されています。そのことから「今回(第1四半期)の売上高は、業界でも最高の伸びではあるものの、利益率が圧迫されていることへの不安もあり、他のライバル社との収益格差の改善などにはつながらないのでは」とも言われています。
英国では大企業に対する過剰な幹部手当を自粛する動きが
そして本社と株主総会でも気になる動きが報告されています。7月11日に開かれたバーバリー社の株主総会で、クリストファー・ベイリーCEOに対する3000万ポンド(約52億円)もの高額の役員報酬に対し、株主達が「NO!」を突きつけるという出来事が起りました。バーバリー社によると、長年に渡りクリストファー・ベイリー氏はCEOに就任する以前から商品企画やビジュアル面に関して貢献したことに対し3000万ポンド相当の株主を渡したとのこと。今後はさらに最高で年1000万ポンドの報酬を渡すという契約をしているそうです。株主総会では約半数以上の株主がこの役員報酬に反対を表明し、今度の経営側の報酬に対する仕組みへの見直しを迫るとともに、監視する姿勢が今後は強まりそうです。バーバリー社は、英国企業の中でも経営陣の報酬が高いことで有名で、前CEOのアンジェラ・アーレンツ氏も英国企業でトップの報酬を得ています。
バーバリー社としては、「世界で最も影響力のあるデザイナー」と呼ばれているクリストファー・ベイリー氏は他の企業からも引き合いがあったために、「バーバリー社に引き止めておくには高額の報酬が必要」として妥当な手段であったと主張しています。ケーブル英民間企業・技術革新・技能相は、大企業や銀行に対し、過剰な幹部手当を自粛するように求め、自粛しなければ規制強化を招くと各企業に警告書簡を送っています。この高額な報酬を巡って、今後バーバリー社と株主の間でどのような状態になるのか、同社がグローバルブランドとして世界に勝負をかけ始めた矢先だけに、今後の展開が注目されるところです。