来春で終了する和製バーバリー…果たして消費者の心はどちらに!?
トラディショナルなチェック柄…と言われると、ファッション通ではなくても頭に浮かぶのがあの「バーバリーチェック」ではないでしょうか。それもそのはず、あのバーバリーチェックの生みの親である英国バーバリー社は、40年以上にも及んだ、日本のアパレル会社・三陽商会とのライセンス契約により、日本のマーケットにバーバリー製品を普及させてきたからです。
バーバリーの冠無きブランドに消費者が魅力を感じるか!?
世界中で知られているバーバリーチェックは、1924年に誕生し、一大ブームを引き起こしました。その後様々なアイテムで使用され、1970年には三陽商会がライセンス生産で「バーバリーロンドン」を展開しました。ただ当時は英国の重厚なデザインテイストが中高年層にしか支持されていなかったのですが、1996年にバーバリーの監修で、日本の若い層を狙い三陽商会が「バーバリー・ブルーレーベル」をスタートしたことで、若者の間でも認知度が高まりました。そしてバーバリーチェックのミニスカートが、歌手の安室奈美恵さんが結婚記者会見で着用したことから大ブレイク。その後1998年に若い男性向けの「バーバリー・ブラックレーベル」もスタートし、すっかり若い世代にも受けるブランドとして定着したのです。つまり「バーバリーはちょっとオジさんぽい」というイメージを、三陽商会が払拭し日本のマーケットに広げるために貢献してきたのですが、来年の春夏物でそのバーバリー社との契約が終了。百貨店や消費者の間では不安や困惑の声が広がっています。
バーバリーのテイストが薄れてはファン離れも?
もともと本家のバーバリーよりも、半額近い価格でブルーレーベルやブラックレーベルが販売することに反対していたという前CEOのアンジェラ・アーレンツ氏は、ラグジュアリー路線に軌道修正する戦略で、三陽商会との長きに渡る契約解消に踏み切ったと言われています。ブルーレーベルやブラックレーベルは、改めて新しい契約を結ぶものの、ブランド名から「バーバリー」の冠は外されブルーレーベル、ブラックレーベルのみとなり、シンボルマークであったロゴや紋章なども使用できなくなり、チェックは本家のバーバリーチェックよりも小さいチェックのみ使用可となったそうです。そうなると今までの英国トラッド調をベースにしながらトレンドを組み込んできた上品なカジュアルスタイルを維持していくのは難しいのでは…という声も少なくありません。
高価な本家バーバリー、冠のないブルー・ブラックに消費者も困惑
契約終了後の来年2015年秋冬からは、ただの「ブルーレーベル」、「ブラックレーベル」として販売する三陽商会ですが、やはり伝統あるバーバリーのテイストがベースにあり、それを若者向きのデザインディティールを加えることで新鮮さを演出していたので、いままでの顧客がそこに魅力を感じられるかとなると多いに疑問が残るところです。しかしながら本家バーバリー製品は英国本社が管轄する直営店などでしか買えなくなり、値段もブルーやブラックよりも高いのでファンがそちらに流れるか?と言えばそこもちょっと首をひねらざるおえません。バーバリー本社としては、「日本は世界有数のラグジュアリー市場で、アジアの富裕層の買物客も増えている。旗艦店などを通じた直営事業は過去2年間にほかの市場を上回る伸びを示しているので期待ができる」と考えているようです。ただし、現在の日本では一時のようなラグジュアリーブームは去り、最新のモードよりもナチュラル、スポーツ、カジュアルなど着心地のよいスタイルを好む傾向にシフトしています。そこに値段も高価なラグジュアリー路線に絞った英国バーバリーの商品が広まるのかと考えると、かなり難しいのではないかという見方のほうが多いようです。
「お高過ぎる」本家のバーバリー製品には馴染めず、かといってバーバリーの冠無き後のブルーレーベルにもブラックレーベルにも魅力も感じずという、両方(バーバリー社と消費者)にとって好ましからざる状況なのでは…と推測している専門家もいます。また消費者のみならず、いままで両ブランドを販売してきた百貨店にとってもこの現状は頭の痛いところでしょう。バーバリーなき後のスペースに三陽商会のどのブランドを入れるのか、三陽商会との取引を継続させるのか…非常に悩ましい状態となっているようです。三陽商会としては、商品コンセプトはそのままにMD制約が緩くなるのでより売り易くなるとの希望的観測もあるようですが、ブルー、ブラックのブランドではなく他のライセンスブランドを主軸に据えている計画をみると、かなり先行きが危ぶまれるのでは?という厳しい見方もあるようです。