バーバリーに代わる主軸収益が見えない三陽商会。買収説も有力に!?
来年、2015年6月に英国のバーバリー社とのライセンス契約を終了することを今年5月に発表した大手アパレルメーカーの三陽商会。ライセンス生産の終了によって、バーバリーブランドはもちろんのこと、日本人の体型や好みに合わせて三陽商会が開発したライセンスブランドである「バーバリー・ブラックレーベル」、「バーバリー・ブルーレーベル」も「バーバリー」の冠を使用できなくなります。
「バーバリー」と決別する後の三陽商会の今後に不安視が
三陽商会としては「ブラックレーベル」、「ブルーレーベル」の名前で、従来から使用していたバーバリーチェックを使用する許可を得てブランドを継続する方向生を打ち出しています。ただ両方とも日本国内だけではなく、周辺のアジア諸国マーケットでも人気のあるブランドだけに、バーバリーの名前を外し、ロゴや紋章も使用できなくなったライセンス契約終了後の商品に、果たしてどこまで消費者が魅力を感じてくれるか…と、百貨店などからは疑問視されています。
主軸は同様のライセンスブランドと認知度の低い自社ブランドのみ
レインコートメーカーの「サンヨーレインコート」からアパレルメーカーへと成長を遂げた三陽商会。バーバリー社とライセンス契約をし「バーバリー・ロンドン」を製造していたものの、当時は日本の若い層には受け入れられませんでした。そこで1996年に若い女性向けのバーバリー・ブルーレーベルを独自に展開、当時カリスマファッションリーダーであった歌手の安室奈美恵さんが着用していたことで大ブレイクし、その後メンズ向けのバーバリー・ブラックレーベルも打ち出し、両方とも三陽商会の主軸ブランドとして同社を支えてきました。これらのバーバリーブランドを失うことによって失われる売り上げが甚大だと言われているのは、明確な数字こそ開示されていないものの、三陽商会の売上高1063億円の過半数(2013年12月期)、営業利益70億円の大半をバーバリーが稼ぎだしていることが理由です。さらに年間を通してバーバリーの売り上げがなくなってしまうと、16年の12月期は売上850億円、営業利益は20億円の大赤字に転落するだろうと三陽商会は推測しています。
このバーバリーの穴埋めをする候補としては、同様にライセンス契約をしている英国の「マッキントッシュ」や米国の「ポール・スチュワート」が挙げられていますが、いずれもバーバリーほどの知名度や人気度には及ばない状態。また三陽商会独自のオリジナルブランドの中では一番有望視されている「エポカ」も、イタリアからデザイナーを迎え刷新する方針を打ち出したとはいえども、主軸ブランドとなるにはあまりにも成果不足です。
M&Aや大株主による買収の観測説が現実味を帯びる
バーバリーが去った後の主軸になるブランドを今まで育てることができなかったのが敗因と言われている三陽商会ですが、やはりライセンス契約終了を発表後、株価は急落しています。4月1日には年初高値の310円が5月の発表後には210円まで下落し、その後わずか220円と盛り返すもそのまま膠着状態が続いています。このように高値から30%株価が下がった状態が続くとM&A(買収・合併)の対象になるために、三陽商会の大株主が動くのでは…という見方もされるようになりました。三陽商会の大株主としては、三菱商事446万株(発行済みの株数3.5%)、三菱伊勢丹416万株(3.2%)、三菱東京UFJ銀行360万株(2.8%)が保有しています。これらの三菱グループか、三菱伊勢丹などの大手百貨店が買収する可能性も大という話も囁かれ、これと言って目玉になる強力なブランドがない現状ではかなり現実味を帯びてきています。買収後、ライセンスブランドや自社ブランドはどう継続していくのか、もしくは縮小されるのかはまだ不明です。
そんな三陽商会は、設立70周年を迎え再生策のひとつとして新しく定めたコンセプト「TIMELESS WORK. ほんとうにいいものをつくろう。」に基づき、33年前に当時CM起用していた長嶋茂雄氏のために仕立てたスーツを復刻します。昔を懐かしむ同氏のファンにとっては朗報ではありますが、これが同社の強力な起死回生策となるかどうかは、先が見えない状態です。復刻版のスーツでバーバリーが去った後の損失をカバーするにはあまりにも微力なので、依然として「三陽商会の今後は厳しい道のりになる」と、アパレル業界に詳しい証券アナリストなどもリアリティのある推測をしているようです。