カーディガンのディテールと歴史
カーディガンは17世紀のフィッシャーマンセーターが元祖?
カーディガンは、日本でも愛されているアイテムの1つですが、その歴史は詳しく語られません。 それだけ浸透しているということであり、若者から老人まで誰でも着用している万能アウターと言えます。
起源は17世紀のイギリスとフランス
カーディガンの原型は、17世紀のイギリスとフランスの漁師達の間で拡がったことが始まりだと言われています。ただ、これは諸説ありまして発祥の地を完全に特定することは難しいようです。傾向として、全てフィッシャーマン(漁師)セーターと関わりが強くなります。
フェアアイルセーター
北海にある100以上からなる群島(シェトランド諸島)の南端にあるフェア島から生まれたとされています。襟はスタンドネック、肩に3つボタンが付いて、袖は編み出し袖。もともと漁師たちの仕事着だったのが、1922年ウィンザー公のゴルフウェアとして紹介され有名になったという話もあります。
アランセーター
15世紀アイルランド西部のアラン諸島発祥とされており、これも漁師の仕事着としてと言われています。模様に意味があって安全への祈りや願いを表しています。しかし、本当はもっと後に生まれたセーターだという説があります。ケルト人との関わり合いを通して、スピリチャルな面、岩と大地がデザインの模様に影響を与えていると言われています。
ガーンジーセーター
イギリス海峡南部、フランスとノルマンディー半島の西方に点在するチャネル諸島のひとつです。ここで生まれたセーターは漁師(フィッシャーマン)の仕事着として使用されています。ギザギザした肌触りが特徴で保温効果と防水効果が高くなっています。模様など装飾性は特になく無骨で、これがイギリスとフランス間でカーディガンが生まれるもとと考えたほうがよいかもしれません。
漁師達の保温性と防寒性を強くすることから生まれたとされるフィッシャーマンセーター。
地元の男子服小売商で取り扱われ、温かくなったときにすぐに脱げるように前を開くことができるものとしてがデザインされました。しかし、この時はまだ「カーディガン」という名前はありませんでした。なかったがゆえに、その後現れるカーディガン伯爵が登場するまでカーディガンはないとされてしまっているようです。
カーディガンという名前が生まれた背景
カーディガンという言葉が生まれたのは、カーディガン伯爵7世(ジェイムズ・ブルデネル)が由来とされています。
1853年からのクリミア戦争で負傷した際、イギリス陸軍カーディガン7世がセーターを前あきにしてボタンでとめられるようにし、保温のために軍服の上に重ね着したのが始まりです。
しかし、新説ではカーディガン伯爵7世達が着用していたわけではなく、当時は皆ベストを着用し、前が開いているベストからヒントを経てカーディガンに結びついたとされています。
カーディガンという名前が、セーターの1つとして名付けられたのはカーディガン伯爵がなくなった1868年。ちなみに、1868年は日本の明治元年にあたります。 それから、1861年の南北戦争でインドの綿生産は止まります。
産業革命とカーディガン
カーディガンが一気に拡大したのは産業革命(18世紀から19世紀にかけて起こった工場制機械工業の導入)からです。多くのカーディガンを生産する技術と能力が機械によって飛躍的アップします。これによって、消費者達はアイルランドの手編みの重いニットを買う必要がなくなりました。
代わりに、様々な厚さで様々な気候や状況に応じたカーディガンが生産されていきます。価格帯は下がり、様々な階級の人々に拡がります。それは、アメリカのアイビー・リーグのトレンドセッター達にまで国を越えて伝わります。
アイビー・ルックとカーディガン
カーディガンという名前が、世界中に拡大した要因として19世紀から20世紀のアメリカのエリート名大学代表のスポーツ選手達、アイビー・リーグのスタイルが強いです。元祖は、スタジャンの起源で知られているハーバード大学の野球チームの代表選手達の出現です。レターマン(代表チームのエース、キャプテン)ジャケットとともにレターマンカーディガンも登場しました。
カーディガンはアメリカのアイビー・ルックに欠かせないアイテムとなり、キャプテンはチームや大学のイニシャルマークをつけてキャンパスライフを過ごすのが流行りとなっていました。オレゴン州のクラシックブランドDehen1920などはその一例です。この若者のエリート階級からクラスメート、他の大学、学生、若者と拡がっていったあたりはスタジャンの拡がりと同じ流れです。
カーディガン:第二次世界大戦前後で現代経済の問題解決の手段とされる
アイビー・リーグの流れとは別に、カーディガンは重量のあるウールニットの代わりとなっていきます。
第二次世界大戦前後では、ウールが不足していからです。“Make Do and Mend" という第二次世界大戦中の質素倹約をうたう言葉があります。
身近にあるもので修理したり再利用しよう,というメッセージでした。カーディガンはそういうアイテムと化したわけです。
サイズはタイトで丈が短くなりました。サイズだけに関していえば、今でも人気になりそうな感じですね。タイトなヴィンテージカーディガンがその類いと言えます。
そういった流れから現在まで、カーディガンのデザインも多様化しています。Vネック、スワローカラー、ケーブルニット、ダブルブレストもあり、デザインの幅が広がっています。